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「おい。俺の寝るとこ」
「へへ……一人寝用じゃねえじゃん? 連れ込んでんだろ」
「アホ。ここには連れ込まねーよ」
これは嘘だ。たまには連れ込む。ただし男を。
「お前こそ嫁いんのに別の女か」
ダークブラウンの天然巻き毛を耳上から掻くと猫みたいに目を細める。
「結婚は牢獄って言ってただろ。松ヶ丘高一のモテ男がな。日下部玲央だから、女子にクズカベって罵倒されてたお前が言うな。嫁にはバレなきゃいいんだよ」
そんなタイプじゃねえだろ、と言いかけ耳朶のシルバーピアスが目に入り止まる。
人は変わる。
「ああ……今もクズだよ」
「う……あ、き、きぼちわり~」
「うわっお前ここで吐くなよ」
慌ててトイレに連れていく。ドアは開けたまま。
「吐いてろ。ポカリ買ってくる」
「優しいな。玲央。変わんねーな」
乾いた呟きが俺の心を湿らせる。
こいつ。ピアスなんかするタイプじゃなかったのに。モテる癖に鈍感でオクテで。だから俺は──
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