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「お前、言ったんだって? 彼女のこと、何か」
「うん……えーと確か『こざっぱり爽やかなくらいドンピシャで何やってもきっと成功する人』……とかだったかな」
そうだな。我ながら、的確なことを言ったと思う。そう、日美子さんが辞める時に。
え。
その彼女が、俺に料理を作ってくれたの?
「安心しろ、お前が食ったのはゲテモノ料理じゃない。初心者でも作れる生姜焼き。お前の好物」
「えっ……で、でも、こう……何ていうか、虫とか小動物の手足みたいなやつが数本……」
うっ、考えるのはやめたんだった。
「あはは~、あれはみのりんが飾りつけしたんですウ。裕貴君、昔からお子様ランチの旗とかオマケの車が大好きだったでしょ?」
「おおいっ! ギザギザのある複数の手足装備なんぞ、お子様ランチとは隔世の感があるだろっ!」
怒りながら、ふと思い至った。
「生姜焼き? 豚の? そんな食材がどこに? てか、味付けは? 調味料は?」
「うん。それより会ってあげたら? 日美子さんに」
「何で?」
「だってこれ、お見合いだから」
「……お?」
お。お。……お見合い?
「まさか、この難破のクローズドサークル的シチュエーション……」
「わーははは! 驚いた? ねえ驚いた?」
驚きすぎて、いや、こんな手の込んだ茶番に、呆れて二の句が継げなかった……。
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