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「みのりんの初恋の人の娘さんなんですって」
「その女性が亡くなって以来、何かと相談に乗ったりしてたらしくてな」
「放っとけない性格なんだよ、みのりん」
ツルの編み込み髪の女性も、手作り鍬石器のオッサンも。みのりんの手の内の奴だった。
みのりんの博愛に上限はない。だから全くの他人の俺を引き取ったりもした。彼女が初恋の人の忘れ形見なら、そりゃあ何かせずにはいられないだろう。それがみのりんだ。
笑って許すしかないじゃないか。
ただ。この島のコミュニティは本物だった。
島の裏側に、スーパーもコンビニもあった。カレー屋も牛丼屋も。自然の木々よりもう少ししっかりした屋根のある小ぎれいな住宅棟も。
日美子さんはそういう、良質な街づくりの仕事を手掛けていたのだった。それでも、ここでも「ティラノー」なんて言われて、感謝はされど、ちょっと恐れ崇め奉られ。
「彼女ね、みのりんに一生懸命料理習ってたのよ」
「お前さんに食べてもらいたくて頑張ってたんだろな。乙女心だなあ」
編み込み女と鍬石器がそんなことを言う。
「だったら普通に食わせてくれりゃいいだろが! 何でこんなややこしい……」
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