美男とティラノー

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「だって裕貴君モテすぎて、女の子の顔なんかすぐ忘れちゃうじゃんか。男を落とすなら胃袋つかむのが一番だが、オレが裕貴君を美味しいものに慣れさせちゃったろ? ただ美味しいだけじゃない、インパクトある料理でもう一度食べたいって思わせるのがポイント!」  ごもっとも。ぐうの音も出ない。 「しかもバイトバイトって、女の子に見向きもしない。だからいいじゃん」  ぐぐ。みのりん、俺を知り尽くしてる……。  で、見事思惑通りに引っかかった俺は、彼女にちゃんと会ってみたいと思った。  おっしゃる通り忘れっぽいので、あの頃の日美子さんについてはぼんやりとしたイメージしかない。でも、ワンレンボディコンのイケイケスタイルが流行っていた中で、肩パットバリバリのスーツで鎧張りに身を固めていたように思う。  それが、スリムで小柄な平凡な。ジーンズのよく似合う活動的な感じの。美人かと問われると肯定はできないけど、目のくるくるした、背筋がピンと伸びた、芯から落ち着いた光を放っているような女性だった。 「ごめんね。一方的に好きで。一方的に食べさせちゃって」  料理のお礼を言う前に、謝られてしまった。でも、頬を染めてうつむきながらそんな風に言う日美子さん。  ――可愛くない?
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