美男とティラノー

3/13
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
「どっちが欲しい?」  みのりんは、以後も何度も尋ねてきた。付き合ってらんなくて「どっちでもいい」とぶすっと答えると、「どっち? ねえどっち?」と答えるまでついて回る。  あるときは、俺を喜ばそうと作ったらしい、どっちも俺の好きなオレンジアイスかチョコアイスだった。問答時間が長すぎて溶けて食えなかった……クソ。  またあるときは、グローブかサッカーボールか。またあるときはクマのぬいぐるみかリカちゃん人形。ヒマワリの種か胡蝶蘭の鉢植え。地場ワインかクラフトビールか。  どっちが当たりなんだかいまだにわからない二択を作っては仰々しくクロスをかけて選ばせにかかり、御開帳。俺の反応がどうでもみのりんは喜ぶ。  ちなみに俺は野球もサッカーも性に合わずテニス三昧、ぬいぐるみもおままごとも外しフィギュア集めに夢中になり、植物も名前を覚えるほどの興味も持てなかった。みのりんの選択ゲームが図らずも裏目に出た。というか、せめてもの逆襲と脇道に逸れた結果か。  ちなみにウイスキーや日本酒を好んでいるうち、酒に強い体質だとわかったので、バーテンダーの仕事に就いた。今や、みのりんの創作料理店で結構な集客に貢献している。俺はみのりんの血をひいてない分、なかなかの美男なのだった。  
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!