美男とティラノー

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 足音はするんだ。  ものすごい重そうな、背骨や心臓を揺るがすような響き。  そしてそれが聞こえると、人々は何をおいても手を止め、そっちの方へ向かってキッチリ45度のお辞儀をする。  声もするんだ……何というか、うめき声? 溜息? 雄叫び? 最初は地鳴りかと思った。  それが、ティラノザウルス……らしい。  足跡も見つけた。というよりそこかしこに点在するのでどうしても目に入る。俺のウエストがすっぽり入って余裕綽々のデカさのそれが、クッキーのくり抜かれた後みたいにポツポツと。  俺とみのりんはタイムスリップして石器時代に……? いや、ティラノザウルスというのは確か、白亜紀。え、石器時代と白亜紀ってどう違うんだっけ。  俺の知ってるティラノザウルスとは、デカい上にものすごくスピーディで力持ちな恐竜だった、ような。北アメリカ大陸にかつて生存した、大型肉食恐竜……。  ぶるる。  先の、髪をツルで編んだ女性。枝の先に石を括り付けた手作り鍬を背負うオッサン。他もみな日焼け顔で筋肉質で、男性も女性も皆、俺の石器時代イメージそのものだ。
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