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彼らが、お供えなのか何なのか、畑の穀物や釣果や狩った鳥なんかを一つ所に捧げる。それが最終的にあんな感じになって島の隅っこにまとめられている――それをみのりんが拾ってきては調理して俺に。
食材はどうとか以前に、罰当たりの要素もあるじゃんか。とても食べれん。
「当初は何にもなかったここで、ティラノーが作物の作り方から釣りの効率的なやり方や、何から何までリードしてくれたんだ」
「つまりティラノー、私ら漂流者の共倒れを防いでくれたわけよ」
「協力してそれぞれの得意技を生かして、グループ分けして話し合いの場を持って集団生活を円滑に行うように」
ティラノー、割に評判は悪くない。
「へえ。ティラノザウルス、賢いんだ。ただ怖いだけの存在だとばかり」
正直な感想を言うと、手作り石器のオッサンが布が破けた肩の辺りを見せてきた。そこには赤紫の大きなかさぶたが――
「怖いぞ。意に添わなかったり和を乱した者はこういうことに」
――それは、歯形か? 噛みつかれた跡、のような。
「最悪あそこ行き。噛み砕かれた食べ残しが山になってるだろ」
それはまさに、みのりんの食材調達場。
再び、ぶるる。
「な、何で俺が、そのティラノーと結婚を?」
「そりゃあんた、あの方、面食いなんでしょ」
ツルで髪を編んだ女性が高らかに言い、他の島民たちが、一斉に笑い声を上げた。
褒められた……いや、嬉しくない。そもそもティラノー、女なのか? 大体、何で全然姿を現さないんだ。
「そりゃあんた、恥ずかしがり屋さんなんでしょ」
ズン、ズン……、と地響きがした。……ティ、ティラノー、同意の拍手……?
手作り鍬のオッサンが俺の鼻先に人差し指を当てて睨んだ。
「君、機嫌損ねないでよ。ティラノーはこの島にとって、神なんだ。島の命運が懸かってる」
うおーい。そんなん、俺に託すなよ。
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