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食わないぞ、絶対。オヤジの突き付けるあやしい料理なんぞ。でも顔も見ない女、しかも恐竜と結婚できるか。
というわけで、俺は足音や声らしきものが聞こえればその方面へ駆けつけ、その顔を確かめ……ようとしたが、腹が減り過ぎて思うように動けなくなっていた。
無念。
「だから。いい加減に食えるもの食えよ」
倒れたまま遠ざかっていく足音の振動を感じていると、板切れに乗せられた、何か6本くらいあるギザギザの手足がそのままキュッと上向いている焼き物が差し出された。
みのりん、今度は何だよ……
と、問いかける力も残っていない。もう本当にヤバいかもしれない。だって、どう好意的に形容したってそれ、到底食欲湧く余地のない見た目……なのに、俺にはビフテキに見えてきた。
「栄養価高いぞ。元気出るぞ。結婚したい気も出るぞ」
あんぐ、と口を開けかけたとき、みのりんの言い様に引っかかった。
「……食べるのと結婚と、どちらかっていう二択じゃ?」
「そうだよ。だけど食べて生き抜いたら結婚もしたくなるかもしれないだろ?」
深く考えることがもうできない。俺は、みのりんが切り分けてくれた一切れを、ついに口に入れた。
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