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「……美味しい!」
俺は感動した。この世にこんな旨いものがあったとは。もう一切れ。いや二切れ。いや残り全部がっついてあっという間に平らげた。
「食べてくれてよかった」
もう何が食材かを考えるのは止めた。というか、これならもう一回でも二回でも食べてみたい。
――ん?
今のひそひそ声は、みのりんじゃあない。くぐもって低めだけど、男の声でもない。
「言ったろ。空腹は最高の調味料なんだ」
これはみのりんの声。
「つまり普段ならきっと食べてもらえないわね……もっと勉強しなくちゃ」
「いやいや。こういうことは実践しながら上手くなるもんさ。OJTというやつだな」
相手は、……まさか。
食ったら上半身が起こせた。次いで膝も立った。そして立ち上がれた。
ひそひそ話は、その大木の陰からだ。
のぞき見すると、みのりんの背の向こうにショートカットの人型が。……何だ、ティラノーじゃない。俺の早合点――
「ぴゃっ!」
――が、俺と目が合うや否や、ショートカットの彼女は恐竜並みのスピードで背走、一瞬で消えた。
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