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幼馴染を、食べたい。才能と人徳溢れる、幼馴染を。
私と物心ついた時から一緒にいる幼馴染は、常に私の前に立っていた。成績は学年で常に首席、運動会や文化祭の行事も第一線で活躍している。
誰からも好かれていて、愛されている。私もそこそこの地位には居たと思うんだ。でも、全部一番は取られてしまった。紛れもない、私の幼馴染に。
幼馴染と友達でいたいという純白な想いが、いつしか薄汚れて見るに堪えないほど歪むには、さほど時間がかからなかった。隣に立つと、私の存在は霞んでいく。目が大きくて、肌が白くて、ころころ愛おしく笑う姿は、周りを一瞬にして惹きつける。希望のカケラを無条件に振り撒く姿は、卑しいものとして私に映った。
気づいたら、一緒にいる。常に、隣にいる。もちろん、離れようとも考えた。自身のどうしようもないやるせなさに似たような渇きは、この子の隣にいる限り、永続的に続く。だけど、私は幼馴染の隣にいるだけで、満たされるのだ。優越感がお腹いっぱいに、満たされる。私は何の取り柄もないから、特別な幼馴染の隣に立っているという事実が、大事な大事な食料だ。
……でも、隣に立つだけじゃ、段々、足りなくなってきてしまったの。
「だから、もっと、ちょうだい?」
私は幼馴染の首に、手をかけた。
ありがとう、食べてくれて。やっと、貴方の一部に……。
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