桜の木の下でフライパンは順調に育っている。

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フライパンの後ろに咲いている桜の木の枝を、女子大生達がポキリポキリと折り出したのだ。 そしてそれを髪に()し、自撮りを始めた。 周りの大人達は引き気味に見ている。 「ちょっとあんた達!『桜切る馬鹿梅切らぬ馬鹿』って言葉知ってる!?桜は素人が勝手に折っちゃうとそこから菌が入って枯れちゃうのよ!あんた達知らないでやってるんでしょうけど桜の気持ちも考えなさい!!」 レミは仁王立ちで腰に両手を当て、女子大生達に(まく)し立てた。 「早口で何言ってんのか分かんなーい!」 「じゃあ枯れないように後でおばさんが何とかしといてよ。キャハハ!」 その瞬間だった。 今まで微動だにしなかったフライパンが、女子大生の頭をパクリと挟み込んだ。 まるでK-1の選手が己の力自慢をする為に素手で折り曲げるパフォーマンスのように、フライパンはぐにゃりと曲がった。 獲物を捕らえて離さないフライパンは、まるで食虫植物のようだった。
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