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真珠は明かりの下でも女王のような品格で虹色に輝いていて、凛としたたたずまいは、これまで地べたを這いつくばり、憐れみを乞うばかりでいた千鳥の心を揺さぶった。
そして、がたんごとん、という汽車の音に重なり、真珠を贈ってくれた多賀亜門の電話越しの声が耳に響いて、その優しいことばを思い出していた。
今、亜門が目の前にいる。
そのことが信じられなかった。
ずっと探し求めていた人と巡り会ったような……でもそんなことを亜門に伝える勇気はなく、もし言ったとしても困惑させるか、軽蔑されるかのどちらかだろう。
それに千鳥自身も今の気持ちをことばにすることなどできないでいるのに、亜門に真っ直ぐに伝えることなどできそうになかった。
「がっかりしましたか」
はっと千鳥が顔を上げると、亜門がじっと見つめていて、その視線をまともに受け止め、反らすこともできずに千鳥はますます顔を赤らめた。
「ダイヤモンドでも入っていると思ったはずです。なのに真珠ですからね」
「がっかりなどしておりません!」
「では、もう一度尋ねます。この真珠を見て、あなたはどう思いましたか」
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