第二話ノ2 恋、露と弾けるとは

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「まもなくさる共和国の宰相殿下が博多に立ち寄ります。そのパーティーにあなたを妻として同行したい。これは私の悲願でもある、日本だけが持つ養殖真珠を海外の貴族に売り込むチャンスなのです」  亜門の瞳が少年のように輝いている。 「そのパーティーに招待されるには、私は加茂院家の令嬢である、あなたとすでに婚姻関係にある必要があるのです」 「それは既成事実というものでしょうか……」  一瞬、目を見開いた亜門が、突然笑い出した。 「あなたのような深窓の令嬢から既成事実ということばが出てくるとは、まいりました」 「はしたないことを申しました……でも、そういうことなのでしょう?」 「きょうからこの部屋で一緒に眠りますが、決して指一本触れないと約束しましょう。でも家の者には夫婦関係があるように振る舞っていただきたい」 「夫婦関係があるように振る舞うなんて……どうしたらいいのでしょうか。人に聞かれたとき、何と答えたらいいのか分かりませんわ」 「それとも、すでに寝所の覚悟をしていたと申されるのでしたら、私も男です。あなたに恥はかかせられません」
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