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夏の太陽を見上げたとき、目が眩み、その輝きに足元すらおぼつかなくなる。
亜門の笑顔には夏の太陽のような熱量があり、千鳥の戸惑いや、ためらいなど瞬く間に解かしてしまう。
亜門は笑みを浮かべたまま、「指一本、触れないという約束をしたばかりで恐縮ですが、今から傷の手当てをします。あなたが他人にこの傷のことを知られたくないのなら、私が手当をしましょう」そう言って千鳥をベッドに横たえた。
「亜門様が傷の手当てを……?」
棚から救急箱を持ってくると亜門は手早く薬や包帯を取り出した。
「少年のころは槍術の鍛錬に明け暮れていたのですよ。しかし気の荒い連中ばかりで修業には、けががつきものでしたから、門下生どうしで手当をしていました」
するりと部屋着を肩まで下ろされ、千鳥は恥ずかしさのあまり息もできなくなった。
「こんなに美しい白い肌に惨いことを」
亜門が傷を消毒し、薬を塗り込むたびに、千鳥は「あっ……はあっ……」と小さな声がもれてしまい、その痛みをこらえる声色が、まるで愛のささやきのようにも聞こえて、そんな声を聞かれては亜門に軽蔑されると、唇をかんでこらえた。
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