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第二話ノ3 目覚めは恥じらいとともに
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朝、目覚めると亜門は長椅子で眠っていた。
千鳥が近づいても目覚める気配はなく服も着たままで熟睡している。
……起こして差し上げたほうがいいのかしら……
肩の辺りに触れようとして、千鳥は昨夜、亜門に体の傷を手当てしてもらったことを思い出し、急に恥ずかしくなってきて、寝室の隣にあるバスルームに入った。
そこには昨日、千鳥が着ていた着物がきちんと畳んで置かれていた。
姿見を見ながら着つけてみたものの、手足に巻かれた包帯を隠しきることはできず、千鳥は手足を縮込ませるようにバスルームから直接、廊下に出た。
階下では女中たちが働き始めた気配がする。
そちらのほうに向かって行くと台所が見つかった。
「おはようございます、千鳥様……いえ、失礼いたしました。奥様」
奥様、と呼ばれるのが、こそばゆくて千鳥は返事ができず軽くうなずいた。
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