タウンズビル八犬伝十一話 親子

ミッション

最悪だ。トムは笑いながら運転している。
「だから打ち合わせ眠そうだったんだ。ヘレン、ずっとサンダー睨んでたぞ」
「具合悪いのか心配して損しました」
他人のことなら笑っていられる。
「トムもあるでしょ、あんた女遊び派手にやりそうだし」
「ないよ」
笑いがまだ残っているが嫌そうな話し方だった。
「サンダーみたいに手当たり次第の無節操じゃない。サンダーは女と話しててもあっちのことしか考えないかもだけれど」
随分な言い方だ。
「きちんと軸があるもんな」
ジョージの言い方に棘を感じた。
この二人は仲良く接しているが多分何かある、とハイが話していたのを思い出した。ジョージの物言いはたまにきつく、冷たく感じる。ハイやサンダーには過ぎるくらい丁寧だが、たまにトムには不躾なのだ。はじめは育ちが関係しているのかと思ったが、そこまで単純ではない気がしている。
明るい中に殺伐とした雰囲気を感じながら、車内には軽快な音楽が流れていた。