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擬似親子
「ヘイガイズ!グッドジョブだ!」
ジムがトム、ジョージ、サンダーに向かって親指を立てた。
「あの老人は出ていくってさ。南の方に行くかもしれないとか話しているそうだ」
安心した。
「ただし、サンダー。君だけはミッションが残っている。老人はサンダーと親子ごっこをしたいそうだ。期限は二週間だとさ」
安心しなければよかった。
親子、ねえ。
彼らはどうしているのだろうか。
サンダーが彼らと出会ったのは九歳のときだった。彼らはとある港湾都市の企業に勤めるサラリーマン夫婦だった。一人息子を亡くしたばかりで、息子の名がそのまま引き継がれた。チェン・レイは本当の名前ではない。
世界的に有名だが、エリアOは学歴社会だ。子どもたちは幼少期から塾に通い、学校では良い大学に入ることが正義と言われてひたすら尻を叩かれる。タウンズビルの若者のように部活や恋愛にうつつを抜かす暇などない。
サンダーの家庭も例外ではなかった。椅子に縛り付けられて問題ばかり解く毎日。運動もしなくなったため、体はぶくぶく太り始めた。ストレスで菓子を食べながら清涼飲料水をがぶ飲みする習慣もつき、サンダーは気づいたら身長百八十センチ、体重百二十キロの巨漢になっていた。風邪も引きやすくなり、少し歩いただけでぜえぜえ言っていた。視力も下がり、牛乳瓶の底みたいなメガネをかけていた。
親は健康に問題のある息子の心配などしなかった。結果を残せば機嫌はよく、そうでなければ怒鳴り散らし、殴った。
「お前はいらない。消えろ。新しい子をもらう」
大学を退学になった日に言われた言葉は忘れない。
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