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トムの運転でアパートに向かう。二人は思い出話に花を咲かせていた。
二人の話を総合すると、アパートはタウンズビル中心街にしては破格の家賃で、ジョージの給料でも一人暮らしができたのが魅力的だったらしい。
タウンズビル中心街の家賃は高い。都市部だから仕方ないと割り切ることもできるが、それにしても高い。一人暮らしなどできる若者は存在しない。かといって実家にいつまでも住んでいるのも格好がつかないため、若者はルームシェアをしている。ジョージの場合はルームシェアをできる友達もいなかったためはじめの頃は実家から自転車で往復三時間かけて出勤していたが、心身に不調をきたし一人暮らしを始めたのだそうだ。
「ああ、あのアパートはタダ同然で借りていたんです。特に俺の部屋は自殺や病死が相次いでいて、前の前の住人がおかしくなって家族が引き取ったとか聞きました。僕はそんなの気にしていないから住んでいましたが」
「アパート自体が大量殺人があった館を潰して建てられたものだから嫌がられていたんだよな」
トムが笑いながらいう。
「他の住人はみんな一月たたないうちに引っ越していたな。あの爺さんくらいか」
「夜中に助けて、死にたくない、とか聞こえていたの、懐かしいな。あれ、住民かな、おばけかな」
俺ならいくら安くても御免だ。サンダーは内心思った。
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