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僕らはみんなひいている
大人は点数稼ぎが大好きな生き物だ。三日前に二分の一成人を迎えた俺は学んだんだ。
戦国時代の偉い人が建てた城のある公園は、昨日までお花見をやっていた。それはもう大賑わいだ。だけど、今朝の公園は、それが夢だったみたいに、しーんとしてる。
そんな場所で俺は、せっせとゴミ拾いをしてるんだ。
なんでかって? 一週間前に大失態を犯したからだ。
「上狛小学校を代表して、観桜祭の清掃ボランティアに行ってくれる人ー!」
朝学活で先生が呼びかけた。手を挙げる奴なんてもちろんいない。
俺は頭を揺らしていた。前日に寝付けなかったから眠かったんだ。
みんな黙り込んでいる。早く自分以外の誰かに決まってくれることを祈ってる。そのために、自分はひっそりしてなきゃダメだ。目立ったら先生の餌食になる。
葬式みたいな空間の中に、一個の爆音が響いた。
俺の眠気が限界に達し、おでこを机にぶつけちゃったんだ。
慌てて顔を上げた俺は、先生のキラキラな目を見てしまったんだ。
「それじゃあ、朝陽くんに行ってもらおうかな! 朝早くに体を動かせば眠気覚ましにもなるからね!」
「え、嫌だけど」
「いいよね、みんな」
みんながパチパチと手を鳴らす。誰も俺の味方はいない。ここで俺を生贄にすれば、自分は解放されるんだから。
誰もやりたい人間はいなかったんだから、ボランティアなんて参加しなきゃいいのに。先生たちは学校の評判をあげたいから、無理やり俺を派遣した。
子どもを使って点数稼ぎなんて、大人ってキタナイ。
ボランティア参加者は自分の持ち場で作業をしている。俺は池の周り担当だ。
葉っぱの浮いている池は暗い色だし、丘の上の城は色褪せて見える。桜はまだ咲いているのに、人がいないってだけで、こんなにさみしい景色になるんだな。
溜息をついた俺は、草の上で寝転がっているコーラの缶を持ち上げる。
「うわっ」
俺の青い靴がコーラ色に染まった。誕生日に買ってもらったばっかりなのに! 中身を残したままポイ捨てとかフザけんな!
「ちくしょう!」
靴についたジュースを払うために、俺は足を蹴り上げながら回転する。
俺の時間が止まった。
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