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「ハッピーバースデー、京香」
「え?」
「もうすぐ誕生日でしょ」
「なんで……」
「知ってるかって? 初めて会った日を思い出してみて」
私が真紘さんに初めて会ったのはシューズショップで。
「あっ」
そうだ、連絡先を記入するときにアンケートも一緒に書いたっけ。誕生月にはクーポンが貰えるって、誕生日も記入したな。
「それで今日のメニューは豪華なんですか?」
「どうぞ召し上がれ」
「いただきます」
お刺身やオードブル、それに肉じゃがやきんぴらごぼう、茶碗蒸しまである。
「美味しいです」
「えっと、オードブルの方奮発したのよ、肉じゃがばっかり食べないでこっちも食べてね」
「真紘さんの手料理の方が美味しいんだもん」
「地味でしょ?」
「和食、好きですよ。それに私のために作ってくれたんですよね?」
どんなに豪華なディナーよりも温かい手料理の方が美味しいに決まっている。
「え、ま、まぁ」
ほっぺが赤くなってる真紘さん、貴重だな。
「そういえば、来週はデートなんでしょ?」
「えっ」
「誕生日当日だもんね、どこ行くの?」
「お洒落してこいって言ってたからドレスコードのあるお店かも」
「そっか、やるねぇ彼氏くん。プロポーズされたりしてね」
「どうだろう? そんな素ぶりないけど」
もしかしたら、という気持ちもないわけではない。
「ごめんなさい」
真紘さんの瞳に、悲しい光を感じて後ろめたくなる。
「謝らなくていいわよ、楽しんでおいで。京香が幸せになるなら、私も嬉しいんだから」
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