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「なぁ、最近忙しいん?」
週末、今回は私の部屋へ秀吾が遊びに来ていた。
「そうでもないけど、なんで?」
「いや、メッセージが素っ気ない気がしてさ」
「あぁ……実はね、ネット小説が面白くて、夢中になってた」
そういえば、途中で遮られるのが嫌で秀吾とのメッセージのやり取りを放置することもあったっけ、ごめん。でも良い場面は一気に読みたいんだもん。
「そんなに面白いん? 京香が読書好きなのは知ってるけどさぁ」
「そうなんだよ、百合小説なんだけど知ってる? 女性同士の恋愛ものね」
「え、レズ?」
「うん、レズビアン」
「へぇぇぇ……」
秀吾の反応は、拒否的ではなくて。逆になんだか……
「えっ、なにその顔」
「いやあれだろ、綺麗なお姉さん同士の絡み? うん、いいよなぁ」
「はっ、なんかいやらしい想像してない?」
AVの見すぎじゃないの?
「え、でも付き合ったらそういうこともするんだろ?」
「それはそうかもしれないけど……あくまでフィクションだから。それにね、百合は尊いんだよ」
なぜか馬鹿にされた気がして悔しいから力説してしまう。
「百合っていう花はね、純潔とか純白とか女性的なイメージでしょ、さらに凛とした佇まいがこう、威厳を感じるし母性の高貴な感じがするでしょ?」
「あぁはいはい、じゃあさ、フィクションじゃなくて京香も経験してみなよ」
「え?」
「俺は相手が女性なら全然気にしないから」
なんで、俺って心広いだろ! みたいにドヤってるんだろう。
「そっか、そうしてみようかな。はは」
単なる掛け合いで、秀吾も私も本気で言っているわけではない、筈だ。
その後は普段通りに過ごしているし、普通に致しているし、ただまぁなんとなくしっくりこないってだけ。
鬱々とした気持ちを晴らすために、秀吾が眠るベッドを抜け出し、私はネット小説の世界へトリップした。
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