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「あぁ、良い汗かいたわ。京香も結構絞れてきたんじゃね?」
その日は二人でジムでトレーニングをしていた。
褒められれば嬉しくなって、もう少し汗を流そうかなという気になる。
「秀吾も着実に筋肉ついてきてるよね、私あと少し走って終わりにするよ」
「じゃ、先に上がってる」
このジムは浴室も付いていてサウナもあるから、きっともう一汗かくつもりなのだろう。ゆっくりでいいよ、と言い残し秀吾はトレーニングルームを出て行った。
二人ともさっぱりして合流した後は近くのファミレスで食事をする。次の日に予定があるため今週のデートはこれで解散の予定だ。
「そういえばさ、良い出会いあった?」
「ん?」
「ほら、例のレズビアン体験」
「は? あるわけないじゃん」
「そっか、俺さちょっと調べたんだ。そういうお店があるんだって」
「そういうって?」
「ゲイバーの女バージョン」
「ビアンバー?」
「そう、それ」
何を言い出すかと思ったら。呆れたことに、行ってみたら? なんて言う。
返事をしないでいたら、更に失礼なことばかり言い募る。
「でも京香、その格好じゃ入店さえ拒否られるかもな」
「は、ジム帰りなんだからしょうがないでしょ」
今日はこのまま車で帰るから、かなりラフな格好ではある。もちろん下着はスポーツブラだ。
「普段だってそう変わらないよな、たまには女らしい格好してみなよ、女にモテたいだろ?」
「別にそういうわけじゃ……」
ケラケラ笑いながらなので冗談だとは思うけど失礼だなぁ。もしかしたら女らしい格好をした方が秀吾も喜ぶのだろうか。ワンピースとかハイヒールとか、随分前に買ったっきりだな。そういえば、いわゆる勝負下着っていうものも持ってないなぁなんて、ぼんやりと考えていた。
その夜、同僚の秋穂ちゃんに電話をした。帰宅したら結婚式の招待状が送られてきていたからだ。
「秋穂ちゃん、日取り決まったんだねぇ、改めておめでとう」
「ありがとう、出席してくれる?」
「もちろん」
「良かった、式には呼べなかったけど秀吾くんも二次会には参加して欲しいな」
「えぇ、いいの?」
「うん、少しでも刺激になればいいなぁって思ってさ」
「ああ……」
具体的な結婚の話が進まない私たちのことを気にかけてくれてるのかぁ。
「え、どうした。喧嘩でもしたの?」
「いやぁ、そういうわけじゃないんだけどね、なんとなくギクシャクしてて」
「なになに、話なら聞くよ?」
「実はねーー」
「それは……京香も複雑だよね。軽いノリで言ってる気もするけど、セクシャルマイノリティに関してはデリケートな問題だからちゃんと理解していないと知らずに傷つけてしまうから。まぁ秀吾くんにしてみれば何があっても京香は自分の所に戻ってくるっていう自信があるんだろうねぇ」
男の考え方だよねって、呆れ気味な声で言う。
「そう、そうなんだよ、ありがとう! なんだか聞いてもらってスッキリしたわ」
私が言いたいことをズバッと言ってくれた、本当にそう思う。男って自分勝手なんだから。
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