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私は、あれからお花見に行くとすぐ帰りたくなってしまう。
どんなにお花見が楽しくても、どんなに桜がきれいでも、帰らないといけないと思ってしまう。たとえあの時とは状況がちがっても、あの時と同じことになってしまうと嫌だから。帰らないといけないと思ってしまう。特に誰かとお花見に来ると帰りたくなってしまう。あの人と同じになってしまうと怖いから。
それでも、私はお花見が好きだ。それはあの人と二人で出かけた最後の思い出が詰まっているから。私は、この桜のお花見が好きだ。これだけの月日が流れてもこの桜の花を見るとあの日のことを鮮明に思い出す。私は、そして記憶の中のあの人と再会する。私は、この時間が好きだから、私は今日もここにお花見に出かける。たとえ一人であっても帰宅したくなってしまう。あの日買ってもらった屋台でお土産を買って帰る。あの日と同じものを食べたかった。来週にはあの日と同じように満開になると思う。私は、また明後日も来るだろう。あの日と同じ満開の桜を見るために、たとえ桜祭りが終わってしまっていたとしても。
そしてまた来年もきっと来るだろう。思い出が詰まっているから。
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