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起(2)
美晴たちはお父さんの車でおばあちゃんの家に向かっていた。途中のパーキングエリアでお土産を買い、また美晴はフランクフルトを食べた。
昨日の夢は何だったのだろう。美晴は考えを思い巡らした。とても美しく短い夢だった。もっと見ていたかった気がするが…。
そうこうしているあいだにおばあちゃんの家に着いた。美晴はやっと着いたと思った。
白い鉄筋造りのおおきな洋風の家が出迎えた。そのさまはいつ見ても圧巻だ。空は澄みわたりいい天気だった。まるで絵のようだった。駐車場にとめると、中からおばあちゃんが出迎えた。
「いらっしゃい」
「おばあちゃん!」
「よく来たね、はやく中においで」
私達家族三人は玄関から中に入った。廊下を進み、ドアを開けると広い部屋が広がっていた。おおきなソファがあり、手前には丈の短いテーブルがあった。私はテーブルの近くに腰を下ろした。
「お母さん、美晴のことをお願いね」
「僕からもお願いします」
「わかったよ、お茶とコーヒーどっちがいい?千恵子は?勇斗さんは?」
「私はコーヒー」
「僕もコーヒーで」
「美晴、おばあちゃんのお手伝いしな」
「はーい」
美晴はおばあちゃんとともにキッチンに向かった。
「今日は来てくれてありがとう」
「私もおばあちゃんに会いたかったよ」
手際よくインスタントコーヒーの粉を入れ、お湯を注ぐ。コーヒーが出来上がる。
「さあ、持って行って」
「うん」
美晴が持って行った。ゆっくりと慎重に。両親は嬉しそうにコーヒーを取った。
「海外のどこに行くんだっけ」
「イギリスだよお母さん前にも言ったよ」
「ああそうだったわ」
それから他愛のないことを話した。そして時間になる。
「じゃあ、お母さんとお父さんは旅行にいくね。おばあちゃんの言う事聞いてるんだよ」
「わかった」
「じゃあね」
「うん、いってらっしゃーい」
両親は出ていった。これからの楽しい旅行に心を弾ませながら。美晴もまた心が踊っていた。
「美晴、テレビをみるかい?1番2番しかきれいに映らないけど」
「いや大丈夫、宿題やっちゃう」
「じゃあテレビは消しとくね」
私は宿題を始めた。おばあちゃんはと言うと小説を読んでいた。おばあちゃんの家にくると宿題が捗るのだ。とても静かな田舎だから。近くのコンビニも車で15分もかかるような田舎だから。テレビの映りもそりゃ悪い。
美晴はスラスラと宿題を解いていった。答えを見ながら。罪悪感はまったくなかった。そのうちおばあちゃんはうつらうつらしてきた。そして小説を閉じて近くのソファに寝転がった。
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