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起(1)
中学二年生の島田美晴はやっと来た夏休みに顔をほころばせた。終業式が終わり、友人たちと別れ、家に帰る。美晴の頭の中は一つだった。そうおばあちゃんの家に行けるのだ。両親は海外旅行に二週間かけて遊びに行く。その間、美晴はおばあちゃんの家に預けられることになったのだ。
美晴はおばあちゃんが大好きだった。いつでも優しい。両親とは違った優しさを感じるおばあちゃん。それでいて駄目なものは駄目とちゃんと教えてくれるおばあちゃん。
またおばあちゃんの家も大好きだった。白い鉄筋造りのおおきな洋風の家。広い庭。庭には家庭菜園があり、植物がたくさん生えていた。また狸やハクビシンがウロウロとやってくる。そんな家だった。
美晴は無事に家に帰ると二階の自分の部屋に入り、早速おばあちゃんの家に行く準備をした。
「歯磨きセットと洋服、あ、宿題も持っていかなきゃ」
「そうよ宿題もよ」
お母さんだった。お母さんは私のところまでやってくると手伝おうかと聞いてきた。私は恥ずかしい気持ちで大丈夫だ、と言った。もう中学二年生なのに家は過保護だ。
「歯磨きセットは持った?おばあちゃんにはあまり迷惑かけちゃだめよ?わかった?」
「わかりました!」
そんなやり取りをしながら私は荷物をまとめていく。これで十分かな?確認もする。
「準備できた!」
「じゃああとはゆっくりしてなさい。明日おばあちゃんの家に行くからね」
「わかった」
私はテレビを見ていた。○○県△△市で土砂崩れが起きたらしい。そこはおばあちゃんの家に近いところだった。一軒だけ土砂崩れに巻き込まれるという珍しい状況だった。
「おばあちゃん大丈夫かな」
「大丈夫よ」
「ただいま〜」
お父さんが帰って来た。お父さんは廊下を渡り、引き出しの戸に手を引っ掛けると戸を開けた。
「おかえりお父さん」
「おーただいま」
今日の夕食は唐揚げだった。お父さんの好物だ。お父さんはこころなしか嬉しそうだ。三人での夕食を終え、お風呂に入り、歯磨きをして布団にはいる。しかし私は寝付けなかった。
他愛のないことを考えた。友人のこと、学校のこと、宿題のこと。宿題は嫌だな。早くおばあちゃんの家に行きたいな。そんなことを考えていたら眠くなってきた。美晴はそして眠った。
夢ではおばあちゃんの家の庭にいた。ゆっくりと歩く美晴。色とりどりの植物が咲いている。家庭菜園も見事なものだ。すると見たことがない通路があった。それは植物でできたトンネルのようだった。そちら側に行こうとした。するとおばあちゃん。呼ぶ声が聞こえて振り返る。
美晴は目が覚めた。不思議な夢だった。しかしここちはよかった。
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