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そして、真剣な手紙なのに、嘘だと思われたら結局傷つくのは城山だ。どう転んでも幸せな結果にはならないだろう。
「お前だって、こいつが嘘だって思われるのは本意じゃないはずだ。そうだろう?」
「わ、わかってます。だから先輩には……その手紙を渡して、清乃さんの反応を見てもらいたくて。そ、それをあとで教えていただこうかと」
「どういうことだよ」
「……僕、自信ないんで。僕みたいなひ弱で草食系なやつ、清乃さんみたいな強い女性には釣り合わないって本当はわかってるんです」
どうやら、彼も自分と彼女の凸凹ぶりには気づいていたらしい。同時に、清乃の好みのタイプがどういうものであるのかということも。
まあ、清乃は己が好きな人がどういう人か、というのをわりと隠していないタイプである。とりあえず“あたしより弱い奴には興味ねえな!”というのは口癖のように言っている。
――いいやつなんだけどな、こいつ。
兄の目から見ても、城山が彼女のお眼鏡にかなうとは思えない。バスケをしている時はむちゃくちゃかっこいいし、顔も十分美形の範疇に入るが、いかんせん性格はどっちかというと乙女だし石橋を叩きすぎて壊すくらいに慎重だ。妹とは良くも悪くも正反対の性格。相性はいいとも思えない。
「清乃さんは、好きなものは好き、嫌いなものは嫌いってはっきり仰るでしょう?彼女はとっても正直な性格で、だからこそ僕には持ってないものをたくさん持っててすごく憧れるんですけど……。だからこそ、嫌いな人の告白されたら嫌なんだろうなってのも想像がつくというか。だから、予め確認したい、というか」
「手紙を貰って、清乃が嫌がるか喜ぶか見てきてほしい、と」
「そういうことです」
こくり、と頷く城山。
「もし、彼女が嫌そうな顔をしてたら。その手紙は、エイプリルフールの冗談ってことにするんです。……手紙で嘘をつくのが本当にカウントされるかはわかりませんけど……多分大丈夫、だと思うし。エイプリルフールなら、嘘をついてもおかしくないから、誤魔化しもきくんじゃないかって」
ああなるほど、と俺は納得してしまった。わざわざ四月一日なんて紛らわしい日を選ぶのは、そうすることで逃げ道が用意できるからである、と。
気持ちはわからないではない。わからないではないけれど。
「なら、尚更駄目だろ」
ここは先輩としてはっきり言うべきだ、と判断した。
「お前が清乃の立場だったらって考えてみろよ。今日手紙貰っても、本当か嘘かわからない。仮にマジ告白だとしても……エイプリルフールって日をわざわざ選んで送ってくるような相手、信用できると思うのか?」
「そ、それは……」
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