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高田清乃。
俺がゴリゴリのバスケ野郎ならば、彼女はバリバリの柔道女子だった。我が家は家系的に身長が大きくなる傾向にあるらしい。長男の俺は現時点で身長198cmあるし、妹の清乃も女子ながら175cmある。父が俺と同じくらいの長身で、母も167cmだからその影響なのだろう。
ついでに、背だけじゃなくて結構マッチョな傾向にある。妹は俺によく似ていて、結構筋肉がつきやすいタイプだった。それから大食い。幼い頃から食卓に積まれた唐揚げの山を取り合って戦争した記憶しかない。
――正直言って難しくね?
脳内に妹の姿を思い浮かべつつ、まじまじと城山の姿を見る。
あの長身マッチョのゴリゴリな妹と、目の前の少女のように繊細な草食系男子。はっきり言って、ものすごい凸凹カップルが出来上がるような気しかしない。
それと、妹は自分がものすごおおおおおおく喧嘩が強いせいなのか、強い男にしか興味はないと日頃から豪語している。城山と話している姿も何度か見たことがあり、けして仲が悪そうには見えないのだが、正直彼女の好みにこの後輩が合致するとは思えなかった。
無論、好みに合わなくたって、性格がマッチすればお付き合いすることは可能だろう。兄として、妹と後輩の恋路を邪魔したいとは思っていないし、むしろ二人がくっついてくれたら嬉しい気持ちもないわけではないのだが。
「僕、清乃さんのメールアドレスとか知らなくて。同じクラスになったこともないし……先輩経由でお話したことがあるだけだし。だから、LINEとかで告白することもできなくて」
彼はもじもじと下を向いた。
「それで……もちろん学校で、面と向かって言おうとしたことも何度かはあるんですけど、結局勇気が持てなくて。く、靴箱の中に手紙入れるとか、お便りを出すとかも考えたんですけど、それはそれで他の人に見られたら恥ずかしいというか。だからもうここは一つ、先輩に彼女への手紙を託して、彼女以外の誰かに見られないようにしていただくのが一番いいのかなあ、的な……」
「……まあ、言いたいことはわかったけど」
はあ、と俺は呆れてため息をついた。つまり、いろいろ考えたもののメアドとかを知らないからデジタルで告白できないし、直接言う勇気もないからラブレターにした、と。
彼らしいと言えば彼らしい。しかし。
「今日だけは駄目だ。……理由は、言わなくてもわかってるよな?」
俺はぎろり、と城山を睨みつける。
「今日は四月一日、月曜日。エイプリルフールだぞ。そんな日にこんな手紙出してみろ、清乃だって嘘かほんとかわかんなくて困るだろうがよ」
これに尽きる。
エイプリルフールはあくまで“人を傷つけない冗談なら言ってもいいよ”な日であるはずだ。そんな日に、こんな微妙な手紙なんか出したら相手を困惑させるに決まっているのである。
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