レオン、花、マシューの話

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「こっち見て」 夫婦が、僕を見ている。僕は売れ残り。そろそろ誰かに買って貰えないと、取り残される。 俺はレオン。ブラックのトイプードルだ。顔はイケメンだ。だけど売れない。人間は見る目がない。 「この子にしようか❔」 「うん」 夫婦が俺に決めた様だ。やったぜ。俺はカゴに入れられて、夫婦の家に行った。一軒家だった。立派な家だ。どうやら、ペットは俺だけの様だ。犬小屋が用意されていた。俺の城だな。 「可愛い」 子供が来た。俺は子供が嫌いだ。めちゃくちゃするからな。 「きゃー」 やっぱり、めちゃくちゃ触りやがる。 子供は3人いる様だ。1人は車椅子に乗っているな。男が2人で、女が1人だ。みんな可愛い顔してるな。 新しい家での生活が始まった。みんな俺を可愛がってくれる。素直に嬉しい。 散歩に連れて行ってもらった。外は久しぶりだ。ここには、ペットを飼っている人が沢山いる様だ。仲間がいるのは嬉しい。 昼間はみんな出かけている様だ。俺は1人になって寂しい。1番早く帰ってくるのは、娘だ。この子が1番優しい。目でわかる。いつも撫でてくれる。次に母さんが帰ってくる。いつも沢山の買い物をしてくる。俺のお菓子を買ってくる。次に長男が帰ってくる。次は父さんだ。いつも疲れている。最後に次男だ。なぜか坊主だ。スポーツでもしているのか? こうして、俺のI日は過ぎていく。 ある日、救急車が来た。長男が連れて行かれた。やっぱり長男は具合が悪いみたいだ。心配だ。でも奴なら大丈夫だろう。入院するみたいだけど。 アイツがいないと、家が暗い。みんな元気がない。みんなアイツが大好きだ。特に母さんはひどい。1番アイツを大事にしているんだな。父さんも暗い。早く帰ってこい。 アイツが帰ってきた。家族が明るくなった。夕食は寿司だ。俺は食べられないけど。でもケーキをくれた。嬉しい。やっぱり、この家にはアイツがいないとダメなんだ。 今日は、散歩の日だ。近くの公園に行く。沢山の仲間がいる。たまにデカい奴がいる。怖い、やめてほしい。水飲み場がある。そこで水を飲みまくる。 散歩は、娘が連れて行ってくれる。友達と一緒に。ありがたい。 お父さんと、お母さんはいつも喧嘩している。お父さんは優しい。お母さんはキツイ。性格が悪い。お父さんが可哀想だ。次男もお母さんを嫌っている。何も考えずに言葉にする。お父さんは何で、この人を選んだのだろう❔不思議だ。 お父さんは、いつも遅く帰ってくる。でも必ず俺を撫でてくれる。優しい人だ。でも無理をしている。心配だ。 休みの日、お父さんが病院に連れて行ってくれた。俺はタマを取られるらしい。子供が作れなくなる。全く人間は勝手だ。本当に嫌だ。麻酔をかけられた。気持ちいい。目覚めると、お母さんがいた。 「レオン、大丈夫❔」 あまり、大丈夫ではない、、、、 下半身が気持ち悪い。麻酔もまだ効いている。 3日入院した。病院はもう、懲り懲りだ。家が1番いい。餌もあるしな。 次男が帰ってきた。また母さんと喧嘩している。母さんは子供だ。次男が可哀想だ。全く困る。 この家で1番偉いのは娘だ。みんな言う事を聞く。何でかな❔わからないが。 次男が1番弱い。可哀想だ。お父さんは、次男の味方だけど、怒る時もある。 この家での生活も、6ヶ月過ぎた。みんなとも、仲良くなった。ある日、俺に仲間が増えた。同じトイプードルの女だ。「花だよ」お母さんが言った。色はシルバーだ。可愛い。 「こんにちは」挨拶した。「うるさい」この女生意気だ。しかも、みんな、こいつばかり可愛がる。面白くない。お父さんなんて、部屋に連れて行き一緒に寝ている。 全く面白くない。俺は2番手だ。コイツどこかに行って欲しい。でも顔はかわいい。 娘が散歩に連れて行ってくれた。コイツも一緒だ。歩くのが遅い。娘は「花、かわいい」を連発している。いや俺の方が可愛い。 夕食は、いつも同じドックフードだ。コイツは、少し高いのを食べている。差別だ。訴えたい。 コイツは、寝るのが早い。そして、寝相が悪い。全く困ってしまう。俺の体に足をあげている事もある。 いつになったら、コイツはいなくなるのか❔いや、それは無理だろう。耐えるしかない。家族みんな、コイツばかり可愛いがる。家出でも、しようかな、、 俺はトイプードル、純正だ。悔しいがコイツも、トイプードル。何で同じ種類を選んだのか❔お母さんは、変わっている。 俺は孤独だ。彼女もいない。いつもオリの中にいる。でも家族がいる。特に娘が大好きだ。散歩に連れて行ってくれるから。好きだ。 お父さんが、病気になったみたいだ。ずっと仕事に行かない様になった。毎日具合が悪そうだ。大丈夫だろうか?心配だ。俺たちのことを子供かまってくれなくなった。家の中が暗いんだ。とても。 お父さんが具合が悪くなってから、お母さんがイライラしている。家の事を1人でやる必要があるからだ。俺のエサも、買うのを忘れる日がある。困ったものだ。 「お母さん、エサないよ」娘が言う。 「行けたら、買う」そう答える。頼むぜ。お腹が空いて死んでしまう。本当は、ドッグフードでなくても、いいんだぜ。 お父さんは、相変わらずだ。家族のみんなも困っている。おまけに、日中、あいつを2階に連れていき、一緒に寝ている。俺も行きたいのに。 ある日、3匹目が、やってきた。バカでかい奴だ。俺たちとは、種類が違う。マシューと名付けられた。ちなみにアイツは花だ。お母さんは何を考えているのか❔今でも俺たちをほっておいているのに、仲間を増やすなんて、、、、わからない。 マシューは、よく食べる。俺のエサまで食べやがる。困ったものだ。おまけに、そこらへんで、クソをする。 「ふざけるな、マシュー」 毎日、お父さんが片付けている。具合が悪いのに、可哀想だ。お母さんは、相変わらず、自分で買ってきたのに、マシューを可愛がらない。全く困った人だ。 俺は、1番可愛がられていない気がする。いじけてくる。1番最初にこの家に来たのに。とにかく、居心地が悪い。何とかしてくれ。 お父さんは、相変わらず元気がない。全くかまってくれなく、なった。寂しいよ。一緒に寝たいよ。 お父さんは、全く回復しない。僕らは、家族の誰からも、構われなくなった。それどころか、家族のみんなの、仲が悪くなった。 お父さんは、ある日突然、いなくなった。どこに行ったか分からない。お母さんも動揺していた。結局、お父さんは、遠くの街のホテルにいた。お金も持たずに。多分、家で居場所がなくなったのだろう。働けなくなったから。でも、俺は知っているよ。お父さんが、家族を守る為、一生懸命に働いていた事を。冷たいよね。みんな。お父さんが可哀想。いつもお父さんは、俺を可愛がってくれたのに。少なくても、お母さんよりは。 結局、お父さんと、お母さんは、別々に暮らす様になった。俺はお母さんと、一緒だ。 他の2匹は、里子に出された。勝手だ。自分で買ったのに、捨てるなんて。危なく俺もそうなる所だった。信じられない。お母さんは、酷い人だ。 お父さんに会いたい。会いたいよ。どうだしたらいい❓こんな気持ち、耐えられない。 お父さんも、多分同じ気持ちのはずだ。いつか会える❓わからないよね。 でも、あの楽しい日々は嘘じゃないよね。僕はお父さんと会える日まで、生きる。必ず。だからお父さんも頑張って。
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