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青空の向こう
僕にはわからなかった。
彼女が空を見上げる理由が。
「明日天気が晴れたら」
そう、彼女は話す。
飾り気のない笑顔で、海が見える場所まで行こうと言った。
瀬戸内海の海。
僕たちが住んでいる、街の丘の向こうへ。
「もし私が死んだら、骨は海に撒いてな?」
「縁起でもないこと言うなや」
「仮にの話や」
「仮にもクソもあらへん。そんな話聞きたないわ」
「心配してくれとるんや?」
「当たり前や!」
彼女はいつも気丈に振る舞ってた。
彼女らしいと言えば、彼女らしい。
子供の頃からだ。
どんなことにも前向きで、まっすぐ何かを追いかけて。
僕はいつも、彼女の背中を追いかけてた。
向こう見ずなその姿に惹かれ、彼女みたいになりたいと思った。
「甲子園」に行く。
その夢を思い描いたのは、夏の季節の下、サンダルを脱ぎ捨て、裸足で海岸を走る彼女の後ろを姿を見た時だった。
僕は彼女の後ろ姿に、雲ひとつない空の青さを見た。
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