命を溢した手で桜を捕まえた

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* 海斗の手が、宙に伸ばされる。 血濡れた白い指が、何かを掴もうとするように動く。 命の灯火が消えかけて。 それでもなお、海斗の『瞳』は見ていた。 そして。 力尽きる。 一人の人間の体から、すうっと大事な何かが抜けてゆく。 「……海斗。」 ナミを始めとする、遺体を回収しに来た仲間たちが彼の元へ到着した時。 彼らの目の前で海斗は倒れ臥していた。 血に濡れた白い手が、不自然に伸ばされ上を向いている。 ぐるりと輪に囲んだ仲間たちは、無言で泣いていた。囁き声はおろか、咳一つこの沈黙を邪魔しない。押し殺された嗚咽だけが、ここで起こった出来事を象徴していた。 じっと見守る彼らの影が、月に照らされ白々と浮かび上がる。 そして。 一枚、二枚……そして、三枚、四枚。 それはまるで、吸い寄せられるように。または……狙い澄ましたように。 どこからか舞い落ちた小さな桜の花びらが、彼の手のひらに乗った。 両手に二枚ずつ花びらを掴んだ彼の顔は、ただ眠っているようにしか、見えなかったという。
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