空腹を満たすもの

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   ◇ ◇ ◇  暗闇の中、何かが口に触れるのを感じる。  湿り気を帯びたそれは、乾いた唇を少しずつ潤し、じわじわと口内にも広がっていく。 「…………」  何か分からないけど、身体はそれを求めている。動きを忘れかけていた喉が動き、口内に流れ込んでくるそれを身体の中へと必死に送っていく。干からびていた身体に、それがゆっくりと浸透していく。 「…………っ……」  ぼんやりとだが意識が戻り、重い瞼を開ける。どのくらい眠っていたのか、うっすらと開けた瞼の隙間に入り込んできた微かな光に目がくらむ。思わず目を閉じるが、ふと暗闇に何かの気配を感じ、しばらくしてまたゆっくりと目を開けてみた。 「……こど……も……?」  暗くぼやけた視界に、小さな人影が映る。  この影が子供だと分かったのは、寝ているオレを覗き込んでくるその子の表情に幼さが見えたからだ。  意識も視界もまだ鮮明にはならないけど、取り敢えず今の状況を確認しようと視界を動かしてみる。  今は夜なのか、昼間のような強い明るさは感じない。明かりといえば、子供が傍らに置いている一本のろうそくの明かりだけ。その明かりのお陰で、ここがどんな場所なのかは確認できた。  どうやら、ここは古い小屋のようだ。
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