空腹を満たすもの

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 下山するには、まずは自分が今いる場所と目的地の把握が必要だと思う。登山未経験者なりに考えて尋ねてみるが、子供たちの反応は相変わらず無言で微笑むだけだった。ただ、この時の反応には一瞬間があり、何かしらの感情が反映された曖昧な笑顔に見えた。  子供たちに抱く初めての違和感。……いや、初めてなんんかじゃない。ずっと感じていた。感じていたけど、無視していた。  こんな山奥に、子供だけがいるという大きな違和感を……。 「ねえ、キミたちはどうしてこんな所にいるの? 子供だけでこんな場所に暮らしているわけはないよね。ねえ、ご両親は?」  いつか尋ねたことも合わせて、矢継ぎ早に尋ねてみるが、やはり子供たちはニコニコと微笑んでいるだけで何も答えてくれない。  最初は救われた喜びが大きく、この状況に対する疑問も深く考えることはなかった。けれども、今はこの状況に疑問を覚えることを飛び越え、恐怖を覚えている。  数日前、小屋を少し離れて辺りを散策してみたが、歩けた範囲だけでもここがかなり山奥だということが分かった。なぜここに小屋があるのか不思議に思えるほど、人の手が入っていない場所なんだ。  そんな山奥にあるこの小屋。オレはずっと物置小屋だと思っていたけど、人が入らないような場所に物置小屋なんて建てるだろうか? 小屋自体は古い物だから、昔は人の管理下にあった場所だとも考えられる。そんな考えは浮かぶが、なぜか納得できる答えには思えなかった。そんな気持ちのまま小屋を眺めていると、ふいに小屋の外観が別の物に見えてきた。
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