空腹を満たすもの

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 それは、祠だ。そもそも、出入り口の戸が観音開きの時点で変わった小屋だなとは思っていた。けど、これが何かを奉るための祠なら、そこまで違和感のある形状ではない。それに、小屋の中にも用途不明な棚のような大きな出っ張りあり、不思議だった。それも祭壇みたいな物だと想定すると、意外と納得できる構造だ。  湧き出る疑問に対し不可解な答えが導き出されるなか、最も不可解に感じたのが子供たちの存在かもしれない。  オレの世話をしてくれるのは子供だけで、大人の姿は見かけない。けど、きっとどこかに親御さんたちがいるはずだ。助けてもらったお礼も言いたいと思っていたオレは、いつだったか小屋から帰っていく子供の後をこっそりと付けていったことがあった。  結果を言えば、親御さんには会えなかった。というか、すぐに子供の姿を見失ってしまった。  子供たちは道のない道を平然と進み、茂みさえものともしなかった。オレはすぐに追うのが辛くなってしまったが、姿が見えている間は必死に付いて行った。けど、子供の姿を見失った瞬間、状況は一変した。  目の前の茂みに子供の姿が隠れた瞬間、一帯が恐ろしいほどの静寂に包まれた。子供は深い茂みを歩いているはずなのに、足音も草木を掻き分ける音もしない。まるで、存在自体がかき消えたみたいに、気配さえも消えていた。  一切の音が遮断されたみたいに、自分の内側から聞こえてくるはずの呼吸や心音なども聞こえてこない。一帯が密閉空間に閉じ込められたみたいな息苦しい閉塞感。  オレは嫌な感覚を思い出していた。それは、滑落した場所で感じた無の気配だった。  
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