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そんな不可解なことがいくつも重なり、不気味さが増す。もしかしたら、ここにいる子供たちは人間ではないのかもしれない。そんな非現実的な妄想をしてしまうくらいに。
オレは質問をすることも止め、無意識に子供から距離を取った。そんなオレの警戒など気にする様子もなく、子供はいつものように布団を敷き、早く寝るように促してくる。胸に湧いた疑心をこれ以上悟られまいと、オレの方も普段と変わらない態度を装い布団に入った。
明日、どうにかして山を下りよう。そう決意し、目を閉じた時だ。
――――っ‼
突如、ある記憶が甦ってきた。
『なあ……、あっち見てみろよ』
登山中、そう声をかけられて足を止めた。前を歩いていた友人はどこかを指差し、そっちの方を見ろと促してきた。言われるままに指された方を向いたオレは、この時友人に背を向ける形になった。
『……ゴメン。俺、まだ死にたくないんだ』
その直後、背後から何かに怯えたように震える友人の声が聞こえてきた……。
そして、友人の残した言葉の記憶を引き金に、霞のかかっていた記憶に新たな場面が甦ってきた。
『本当に、ゴメンっ――』
突如、背中に感じた衝撃。それは小さな衝撃だったが、疲労と足場の悪さが重なり踏ん張りが利かなくなっていたオレの身体は、いとも簡単にバランスを崩した。
次に感じたのは、剥き出しの岩肌に全身を打ち付ける耐えがたい痛みと伸びた木の枝で皮膚が切り裂かれる鋭い痛み。
二度目の謝罪の直後、オレは友人の手で崖に突き落とされた……。
「……どういうことだ?」
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