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「こんにちは」
声をかけられて振り返った。
名前も住んでいる所も知らないけれど、犬の散歩の途中でよく合うご婦人。その人に、いつからか声をかけられるようになった。
「今日も○ちゃんとお散歩ですか」
「ええ、まぁ」
「うちもです。×ちゃん、お友達に会えて嬉しいねぇ」
にこにこと語るけれど、ご婦人が連れているのは犬じゃない。というか、『それ』、どんな専門的な図鑑にも乗っていない、いわゆる未確認生命体ですよね? そして、そいつがうちの犬にまとわりつくのは、友達に会えて嬉しいからじゃなく、目の前に美味そうな餌がいるから、ですよね?
会うたび不気味だし、何より愛犬が怯えるので、何度も散歩のコースを変えた。でも必ずどこからか現れて声をかけてくる。
このままだと、我が愛犬はこの『何か』に食われてしまうかもしれない。
そうなる前に、少し手間ではあるけれど、近所を散歩するのをやめ、車でどこかのドッグランなどに通うとしよう。
犬の散歩…完
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