56.ロジェス伯爵side

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56.ロジェス伯爵side

   王国をまとめるための我がロジェス伯爵家とスコット公爵家の婚約。  戦争好きの帝国の目がこちらに向かないためにも、国内で争っている場合ではない。王家が我が家を選んだ理由も理解している。  世間は国王派が中立派を囲い込むためのものと思っているが、事はそんな単純なものではない。  バーバラは賢い子だ。  もしかしたら裏の事情も薄っすらと気付いているのかもしれない。  この婚約は王命だが「解消しても構わない婚約」でもある。  スコット公爵のクソガキはこの婚約の重要性を理解していない。婚約当初なら兎も角、今なら当然、父親である公爵から婚約の必要性を教えられている筈だ。  自分自身の将来と公爵家の安泰を望むのであればバーバラと仲睦まじくする必要があった。  だが、あのクソガキは全く理解していない。  公爵家の息子としては世間知らず過ぎる。跡取り息子ではないから甘やかしたのか? 何れは婿に出すからと無知なままでいさせたのか? 筋金入りのドラ息子の心境は私にはさっぱり理解できない。  政略の意味合いすら無頓着すぎる。  クソガキの愚かな態度にスコット公爵が何度も強く注意をしているようだが効果はない。バーバラと仲良くする気もなさそうだ。歩み寄るという言葉を知らないのか? しかもバーバラに文句を付ける始末だ。それでいてバーバラの優秀さが露見すると「女のクセに生意気だ」と居丈高な態度を取る。自分から言いだしておいて難癖をつけるなど何様だ?  もっとも、大半の貴族達はバーバラに同情的だ。  親世代はクソガキの所行に眉をひそめ、爺世代はスコット公爵家を非難する。  幼少期は過酷なダイエットをするように誘導し、並みの令嬢なら裸足で逃げ出すと言われるミレニウス女史の「淑女教育」を促し、人脈作りのために「茶会」に出るよう命令する。学園に入学すれば自分の成績の悪さを棚に上げて婚約者に成績上位にいるように示唆する。  如何に男尊女卑の傾向が強い王国でも限度というものがある。  こういった女性側に努力成果を促す場合は、男性側も同じかそれ以上の努力と結果を出さなければならない。  クソガキのしている事は「女性を理不尽に虐げる行為」でしかない。  招待されたパーティーでエスコートもせずに婚約者を放置する。  婚約同士の「お茶会」もドタキャンする。  誕生日プレゼントも忘れる。  婚約者としても一人の男としても最低ランクだ。  その男が浮気した挙句に恋人を作った!?  バーバラと結婚してやるから恋人の事は黙認していろだと!  宜しい、戦争だ!  
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