57.スコット公爵side

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57.スコット公爵side

 バーバラ嬢は可愛らしい少女だ。    茶色い髪に大きな青い目。  小動物を思わせる愛らしさがあった。  優しく忍耐強い。そのうえ努力家な性格はチャールズに良い影響を与えてくれると、私は考えていた。  次男のチャールズは頗る顔が良い。  だが、いくら顔が良くても、出来の悪いチャールズに、政略とはいえ、バーバラ嬢を逃したら後がないことも理解していた。  公爵家に生まれたからか、それとも本人の気質故か、チャールズはプライドが高かった。どこにそんな自信があるのかと父親である私ですら頭を傾げてしまう程だ。  婚約者同士の交流ですら「めんどくさい」「何故、こんなことを」と文句ばかり。優しいバーバラ嬢だからこそ何とかなっていたというのに……。 「これは本当のことなのか?何かの間違いではないのか?」 「旦那様、全て事実でございます」 「そうか……陛下も承知のうえか……」 「はい」    王命の婚約が白紙になった。  この事実に信じられない気持ちと、やはりな、との思いも同時に沸いた。  婚約初期から態度の悪いチャールズ。  当然、事のあらましは王家にも報告されていた。  しかも今回はチャールズの不貞。  バーバラ嬢に堂々と浮気を宣言している始末。どこまで頭が悪いのか。 「それと、旦那様」 「なんだ?」 「学園の方から手紙が届いております」  また何かやらかしたのか。  今度はなんだ?  学園からの手紙。  内容からして良いものでないことは分かる。 「……これは……」  手紙の内容は、チャールズの留年の知らせだった。  成績が悪いことは把握していたが、留年になるほど酷いとは……。  しかも風紀を乱しているとも。    何でも恋人の女性を愛人にしてロジェス伯爵家を乗っ取ると風潮していると。  いずれ自分がロジェス伯爵になるのだからと。  伯爵一家には仕事だけさせてやるとか。  邪魔になったら始末してやるとか。    とても正気とは思えない。  学園の、それも大勢の前で言うのもアレだが、チャールズの考えは貴族というよりも人としてあり得なかった。まともではない。  お家乗っ取りは大罪だ。  私は急いで伯爵家に先触れをだし、チャールズを殴りつけて準備をした。  一刻も早くバーバラ嬢とロジェス伯爵に謝罪しなければならない!!  
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