ウミガメのスープ《考察》

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講義が始まるまで後10分ほどあった。 隣に座っていた女子生徒が「お腹が空いた」と呟いたので、僕は「今朝買ったばっかりなんだ」と言いながら、店名が印刷された紙袋の中から取り出した人気店のシュークリームを1つ差し出した。 ありがとう、とシュークリームを受け取りながら、女子生徒が僕に聞こえるか聞こえないかくらいの声量で呟いた。 受け取ったシュークリームを見つめながら女子生徒が続けた。 「ねぇ、『ウミガメのスープ』って知ってる?」 「聞いたことはあるけど、どんな内容なのかは知らないんだ」 僕はそう返した。 「一人の男が、海の見えるレストランで『ウミガメのスープ』を注文した。スープを一口飲んだ男は、シェフを呼んで『これは本物のウミガメのスープですか?』と尋ねた。するとシェフは、『はい、こちらは本物のウミガメのスープでございます』と答えた。勘定を済ませて店を出た男はその後自ら命を経った。一体何故?……って話」
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