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凍った路面を金属の鎖でザクザクと突き刺しながら、オンボロ車は進む。その度に車体は大きく揺れ、決して乗り心地が良いとは言えない。それでも、二人の表情は明るかった。互いが居れば、例え戦場でもどこでも、常にそこが理想郷となる。
街を離れると、次第に辺りは自然の多い景観へと変わっていく。一時間近く掛けて到着したのは、森の入口にぽつりと建つ洋風の小洒落たコテージだった。元は貸別荘として使われていたようだが、古くなって放置されていたものを例によって譲ってもらった。
中には入浴や排泄施設、キッチンの類なども一通り揃っており、部屋数も多くてなかなかに広い。多少の修繕や掃除は必要だったが、当面の拠点としては申し分ない。
「ようやく車中泊から解放されるね~」
ワンボックスカーの積載スペースから先刻街で入手してきた新しい布団を下ろしながら、ツヴァイがホッとしたように言う。
「そうだな」
アインスも同じく家具を運びながら、しみじみ頷きを返した。戦中にはもっと酷い環境下で眠ることにも慣れていたが、やはり風雨を凌げる壁に温かい布団があるのはありがたい。
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