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7.曲者
(何やってるんだろう、俺……)
きっと、彼を傷付けた。
ツヴァイの胸中は罪悪感と自己嫌悪でいっぱいだった。
今に始まったことでもない。今回ほど踏み込んだことはなかったが、これまでにもそういう雰囲気になりかけたことはある。
大人同士、愛し合う恋人同士、愛情表現の延長で身体的な繋がりを求めるのも至極当然のことだ。けれど、その度にツヴァイが怖気付き、機会を逸していた。そして、その度にアインスが優しい言葉を掛けてくれていた。
「焦る必要は無い。お前がしたいと思えるまで、私は待つ。それに、恋人だからといって必ずしもそういうことをしなければいけない訳でもないんだ。私はおまえが傍に居てくれるだけでも充分だ」
彼はそう言ってくれたが、その優しさに甘えて未だに過去を乗り越えられずにいる自分が、ツヴァイは情けなかった。
(俺だって、アイちゃんとしたくない訳じゃないけど……)
溜息を吐いて、服を整える。その時、僅かな物音を聴覚が捉えた。反射的に音の方角を見遣り、ツヴァイが凍りつく。
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