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カーテンの隙間、窓の外に人が立っていた。――若い男。一瞬目が合うと、ハッとしたように身を翻してその場を離れていく。
(見られてた……!?)
金縛りから解けると、ツヴァイは窓に駆け寄り、カーテンごと開け放った。白い粉雪と共に冷たい外気が頬を撫でる。走り去る不審人物の後ろ姿が見えた。
(アイちゃんに……駄目だ、間に合わない)
アインスは今、シャワールームに居る。
ツヴァイは意を決して窓枠に足を掛けた。ここは一階だ。躊躇無く身を乗り出して、外へと躍り出る。靴下一枚の足に柔らかな雪の感触が伝わった。
「待て!」
そう言って待つ奴は居ないだろうが、アインスに異変を伝える為にも一応声を出す。不審な男は案の定聞き耳を持たず、一目散に森の中を駆けていく。悪路だというのに随分と足が速い。
幸い、男の纏う衣は黒だ。白い世界に、一点その色は目立った。また、身軽さではツヴァイも負けていない。程なく追い付き、飛びかかる。押し倒して背中に体重を掛け、男の右腕を後ろ手に締め上げると、悲痛な声が上がった。
「痛ててててっ!」
「君は、誰? 何が目的?」
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