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「おい、明らかに初対面だったろうが! 吹かしてんじゃねーぞ!」
「違うわよ! あたし達は正真正銘の恋人なんだから! ねー、ジョン! 行きましょ!」
当然、半グレ達が納得するわけもなく、非難が飛び交う中、今度はやや困惑顔の大男が女性に連れていかれそうになる。
そこへ――。
「アイちゃん」
またも第三者の声が割って入った。どこか甘い響きのある中低音。見ると、大男と揃いの灰色の外套に身を包んだ長身痩躯の姿があった。深く被いたフードからは、容貌は窺えない。
「ごめんね? 俺の連れがお邪魔しちゃって。困ってる人を放っておけない正義漢でさ」
新たな声の主は言いながらこちらへ歩み寄り、徐にフードに手をかける。
皆がハッと息を呑む気配があった。フードの下から現れたのは、目を奪われるような白皙の美貌だった。絹糸のような白銀の髪、宝石のような紫電の瞳、女性と見紛う中性的な顔立ちをしているが、その声や体付きから、大男と同じく二十歳頃の青年ということが分かる。
「代わりに俺が相手してあげるからさ、それで許してくれない?」
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