1.ベタな展開

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 半グレ達から動揺の空気が上がった。 「は? 相手って……」 「男じゃねーかよ!」 「……男は、嫌い?」  窺うように小首を傾げ、美貌の青年は蠱惑的に微笑(わら)った。同性でも思わずぞくりとするような色香に、一同が言葉を詰まらせる。 「なんてね」  次の瞬間、その紫電の瞳がじわりと色を転じた。深い真紅――鮮烈な、血の色。 「今日はもう遅いから、皆もう家に帰って休みなよ。このことは忘れてさ」  驚く彼らの目を一人一人見据えながら、青年はゆっくりとそう告げた。途端、男達はすっと表情を消し、人形のように虚ろな顔で従順に頷きを返した。そのまま無言で立ち去っていく彼らの奇妙な様子に、残された女性が戸惑いを示す。 「え? え? 何?」 「君も。ここであったことは全部忘れて、まっすぐお家に帰りなよ」  赤眼の青年は彼女の方にも顔を向けて、同じように。 「それから」  と、見せ付けるように〝アイちゃん〟と呼んだ大男の腕に腕を絡ませて、 「これは俺のだから。みだりに触らないでね?」  にっこりと牽制した。
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