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半グレ達から動揺の空気が上がった。
「は? 相手って……」
「男じゃねーかよ!」
「……男は、嫌い?」
窺うように小首を傾げ、美貌の青年は蠱惑的に微笑った。同性でも思わずぞくりとするような色香に、一同が言葉を詰まらせる。
「なんてね」
次の瞬間、その紫電の瞳がじわりと色を転じた。深い真紅――鮮烈な、血の色。
「今日はもう遅いから、皆もう家に帰って休みなよ。このことは忘れてさ」
驚く彼らの目を一人一人見据えながら、青年はゆっくりとそう告げた。途端、男達はすっと表情を消し、人形のように虚ろな顔で従順に頷きを返した。そのまま無言で立ち去っていく彼らの奇妙な様子に、残された女性が戸惑いを示す。
「え? え? 何?」
「君も。ここであったことは全部忘れて、まっすぐお家に帰りなよ」
赤眼の青年は彼女の方にも顔を向けて、同じように命じた。
「それから」
と、見せ付けるように〝アイちゃん〟と呼んだ大男の腕に腕を絡ませて、
「これは俺のだから。みだりに触らないでね?」
にっこりと牽制した。
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