2.視線

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2.視線

「……相変わらず凄いな、お前の能力(ちから)は」  女性も立ち去り、灰色コートの二人だけになると、黒髪の大男ことアインスは決まりの悪さを誤魔化すように感嘆の息を吐いた。すると白銀の青年、ツヴァイはくるりと振り向き、 「あのさぁ、アイちゃん」  不服そうな声を発した。ちなみに、先程まで真紅に染まっていた彼の瞳の色は、今は元の紫電に戻っている。 「俺達、逃亡中なんだよ? 極力目立つ行動は控えようって言ったじゃん。何で面倒事に自分から首突っ込むかなぁ」  大きな荷物の運搬に、アインスを先に一人で車の元へ行かせてしまったのが良くなかった。その後、細々とした追加の買い物を済ませてツヴァイが駐車場に戻ると、そこにアインスの姿は無く、焦って探したところ近場で先刻の揉め事に巻き込まれていたといった次第だ。 「……済まない」  二メートル超えの巨体を精一杯縮めて萎れる相棒兼恋人に、ツヴァイは小さく苦笑を漏らした。 (まぁ、俺は君のそんなところに惚れたんだけどね)
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