2.視線

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 思わぬ反撃にツヴァイがキョトンとすると、アインスは彼の頬に手を添えて、こう主張した。 「あんな危険な挑発の仕方をして……何かされていたらどうするつもりだったんだ」 「あれは……こっちに注目してもらう必要があったからやっただけで」 「分かっている」  ツヴァイの固有能力、〝催眠〟の発動には、被術者と目を合わせる必要がある。その為のパフォーマンスだったということは、アインスも勿論理解はしている。 「だが、煽られた相手があの場でお前に無体なことをしでかさないとも限らなかっただろう。――俺は、お前を他の奴らには触らせたくない」  大真面目に見つめられ、そんなことを言われてしまえば、ツヴァイはもう何も反論できなくなってしまう。 「……はい。気を付けます」  紅潮する頬を隠すように、自身もフードを被り直し、ぐいと口元まで引き下げた。 (相手を惑わせるのは、俺の得意分野だった筈なのに)  アインス相手だと、逆に自分の方が翻弄されてペースを乱されてばかりだ。それが悔しくもあり、嬉しくもあるのだから、困ってしまう。 「とにかく、駐車場に戻ろう。あまり長居は禁物だし」
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