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3.ハッピーエンドのその先
駐車場では、オンボロのワンボックスカーが律儀に二人を待っていた。元は純白だったのだろう、錆の浮いた茶斑のボディを、降り積もる雪の白粉が幾分か綺麗に見せている。廃車寸前で棄てられそうだったのを譲ってもらい、直したものだった。
とはいえ、最低限動くようにした程度で、あちこちガタが来ていることは変わらず、運転席に乗り込んだアインスがキーを回しても、なかなかエンジンが掛からない。
助手席に座ったツヴァイが肩を竦めた。
「やっぱ、もっといいのにすれば良かったのに」
「代金を払う訳でもないのだから、贅沢は気が引ける」
アインスとツヴァイの二人は、生物兵器として人為的に生み出された〝吸血鬼〟だ。元は人間の戦災孤児だったが、兵士となる為の施設と偽り連れてこられた研究所で人体実験を受けた。
過酷な環境下で次々に仲間が命を落とす中、生き残ったのは彼ら二人だけ。唯一の弱点である心臓に爆弾を埋め込まれ、生殺与奪の権利を握られた状態で人類の為に長い歳月をAI機会兵との闘いに費やしてきた。
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