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高校のときの部活の先輩に聞いた話なんだけど、先輩が通っていた中学の中庭に大きな桜の木があってね。そこに近づいてはダメなんだって。
先輩の友達に、優等生の子がいてね――Aさんって呼ぶね。Aさんは、中二のとき同じクラスに、ある女の子――Bさんがいて、暗そうな子だったから、一ヵ月たっても友達ができなくてさ、担任に仲良くしてやってくれって頼まれたの。Aさんは学級”副”委員だったから。
学級委員の子に頼めばいいのにって? Aさんのクラスの学級委員は男の子だったんだよ。ていうか、その中学はさ、男子が学級委員、女子が学級副委員って決まってて、Aさんは学級委員の子よりずっと成績良くて友達もいっぱいいたんだけど、女子は学級委員にはなれないんだからって……あ、ごめん。話を戻すね。
お昼休みにAさんはBさんを探しに行ったの。一緒にお弁当を食べようと思って。で、教室にいなかったから中庭に行ったの。そしたらBさん、一人でお弁当食べてた。大きな桜の木の下で。
Aさんはそりゃあ止めたよね。早くその木から離れたほうがいいって。でもBさんは「なんで? こんなに綺麗に咲いてるのに?」って。
え? うん、そう。五月初めくらいの話。え? 咲いてるよ、桜。北海道だもん。
話、戻していいかな?
Bさんは何で桜の木の下にいちゃいけないのかを何度も聞いてきて、Aさんは答えられなかったの。「中庭の桜の木には近づいてはいけない」っていう言い伝えはあるけど、何でかは誰も知らなかったから。
――ぼとり。
Aさんが困っていると、”何か”が上から降って来たの。足元を見たら、散った桜の花びらの上に肉塊が落ちてた。生の鶏モモ肉みたいな感じで、ピンク色で、ところどころに赤い血管が浮き出ててさ。
Aさんは怖くなって走って逃げた。「Bさんと仲良くできません、すみません」って担任に泣きついた。肉塊のことも言ったけど、先生は鼻で笑って取り合ってくれなかった。
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