菜津

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菜津

校庭に入り中庭で菜津の話を聞く。まぁどうせ私にはどうにも出来ないだろう。人脈がある訳でもなく、活発と言う訳でも無い。普通を超える様なものは私には無い。突然に、必然に菜津は話し始めた。 「お兄ちゃんが一時的に蒸発しちゃったの!」如何にも何も助けになれそうに無い話だった。誰かに言いたかっただけなのかもしれない。ただ私の心は重くなる。 「どうしてそんな事に?」此処まで聞かされれば後は聞いてあげるしか無いと思った。 「この春に高校を卒業した彼女が居たんだけど、子供が出来てたみたいで、彼女の親御さんにはちゃんと説明したみたいなんだけど、ウチの家複雑なのは話したよね?お兄ちゃん奥さんになる人に、赤ちゃんに負担をかける形にはしたく無かったみたいで、とりあえず父さんと母さんには言わずに出て行ったの!私どうしたら良いんだろう?お兄ちゃんが居たから今までそれなりに上手く回ってたのに、、」 「私達ももう高3だもんねー。菜津は頭良いし、家族的にも今年いっぱいが勝負だね!お兄さんも生まれたらひょこっと現れるんでしょ?」 「まぁそうなんだけど、お兄ちゃんが家計を回してたからそこが心配。私はまだ未成年だし、、」 「今は勉強のことだけ考えたら良い。お金に困るならお兄ちゃんに工面してもらう事は可能なんじゃない?」 「そうかもしれないけどできるだけ負担かけたくなくて!」 「菜津の負担になるのが一番良く無いよ。お兄さんは奥さんが第一にしてるんだろうけれど、今まで家計をお兄さんが回してたのは菜津の事もあったはずだよ。相談したら助けてくれると思う。奥さんには言わない方が良いだろうけどね」 「そうだね!ありがとう!」予鈴がなる時間が近づいていたため、二人は急いで教室に向かうのだった。
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