擬態(影山飛鳥シリーズ03)

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第2章 なぞなぞ 「影山さん、これは今からお話しすることとは直接は関係がないのですが」 「何でしょう?」 「ヒルとクモの共通点ておわかりになりますか?」 「ヒルってあの血を吸うヒルですか?」 「はい」 「クモは糸を出すクモですよね?」 「はい」  影山は三日月がどうしてこんな質問をしたのかわからなかった。 「すみません。今からお話しする中にアリとクモの話が出て来るんです」 「アリはせっせと巣に餌を運ぶあのアリですよね?」 「はい」  影山はこれからイソップでも語られるのかと思った。 「それでふとヒルとクモのことが浮かんで来てしまって」  するとそこに鈴木がちょうどコーヒーカップを3つお盆に載せて戻って来た。 「先生、アリとクモって何の話ですか?」 「うん。いまちょっとヒルとクモの話が出てね」 「アリとキリギリスではなくてですか?」 「キリギリスは関係ないんだよ。ヒルとクモのなぞなぞなんだよ」 「でも今アリとクモと聞こえましたが」 「うん。それはこれから出て来る話らしいんだけどね。その前に頭の体操をということで、三日月さんがヒルとクモの共通点は何かと聞いてきたんだよ」 「どっちも気持ち悪いです」  それには鈴木が即答した。 「なるほど、それもそうだね」  影山は鈴木の答えを聞いて微笑んだ。しかし、三日月は漢字博士の異名を持つ人物である。まさかそれが答えとは到底思えなかった。 「三日月さん、このなぞなぞはあなたが出すくらいですから、漢字に関係あるのですよね?」 「はい」 「漢字ですか?」  漢字のなぞなぞだとわかって鈴木が首をひねった。 「でしたらわかりました」 「先生、何ですか?」 「鈴木君、わからないかい?」 「はい」 「そうか、ではこれから三日月さんが話し終わったら、その時に答えを教えてあげよう」 「先生、それって酷くないですか?」 「ううん。君に考える時間をあげただけさ」  三日月は目の前の二人の会話を笑って聞いていた。しかし影山が、ではお話しくださいと言いながら三日月を見たので、三日月はわかりましたと言って話を始めた。
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