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第1章 依頼
影山が事務所に到着すると、待ってましたとばかりに助手の鈴木が近寄って来た。
「先生、三日月さんがお見えになっています」
「三日月さん?」
「はい。警視庁の」
三日月、それは影山が以前関わった事件で知り合った青年で、漢字博士と同僚から呼ばれている警視庁の刑事であった。
「何だろう?」
「どうやら依頼らしいんですが」
「刑事が依頼?」
影山は刑事がどんな用件かと思いながら応接間のソファに座っている三日月の前に進んだ。
「影山さん、お久しぶりです」
三日月は影山に気が付くとその場で立ち上がり、軽く会釈をしながらそう言った。
「あの時はお世話になりました」
「いいえ、こちらこそ三日月さんにはお世話になりました」
影山がそう言ってソファに座ると、それを待っていたかのように三日月もソファに腰を下ろした。
「本間さんはお元気ですか?」
「はい。影山さんに宜しくと言ってました」
「すると今日三日月さんがここへいらしたことは本間さんも御存知なのですね?」
「はい」
「どんなお話なんですか?」
「実はある人物の死が自殺か事故か、或いは他殺か、それを調べて頂きたいのですが」
「それは今、三日月さんと本間さんが関わっている事件なんですか?」
「関わっているというか何というか、サイドからのバックアップというか」
「なるほど。後方支援みたいなものですね」
「まあそんなところです。それで本間さんが是非影山さんの推理を聞いて来いと言い出しまして」
「本間さんが」
「はい。それで飽くまでプライベートとして私が一人でお邪魔したということなんです」
「わかりました」
「影山さんに事件の全貌をお話しして、それでその人の死に果たして事件性があるのか、それを是非推理して頂きたいのです」
「わかりました。それではお話しください」
「ありがとうございます」
影山は鈴木にコーヒーを入れて来るよう指示をすると、鈴木が戻って来たら話を始めてくださいと三日月に言った。
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